Cat Fez Blog
2022/02/13 15:46
乳白色の緞帳が星空から降りて来て消え入りそうな湾岸道路沿いにある赤白の千鳥格子の巨大タンクの肩に蒼白く凍てつく23番目の月が寄りかかるのが見えた。
モモタロウは付け根が鼠径ヘルニアで異様に腫れ上がって痛む左足を庇ってビッコを引きながら東西道路をゆっくり歩いていた。一人きりだった。そしてまた止まってはオレンジが眩いハロゲン照明灯を見上げて鳴いた。白い息が頼りなく立ち昇った。
「僕はどこから来たんだろう?」
「父さん母さんはどこにいるんだろう?腹違いの妹は?どうして次々といなくなるんだろう?」
「あー、お腹すいたなあ、今日も何にも食べられなかったよ、いつまで続くんだろう?」
「あの目の前でいい匂いの缶詰を開けてくれるブルーのヘルメットのヒトにまた会えるのかな?」
前爪でアスファルトを掻いたその刹那、100トン積み厚板運搬特殊運搬車が仄かなヘッドライトでモモタロウを照らすと地鳴りのような排気音でギリギリ通過して行った。
「あー、ぺっちゃんこになるとこだったよ。先週は仲間のリリィが機動車のタイヤハウスで寝込んだばっかりにホイールに巻き込まれて死んだしね。」
「僕たちって何なんだろう?いつ産まれたんだろう?どこへ行くんだろう?」
「覚えてるけど忘れちゃったよ。」
「優しいヒトに会えるかな?」